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自然科学部の挑戦!サンゴを白化から守る研究レポート#4

実験開始。
片方の水槽に取り付けられた「繁殖隔離水槽」内に,「アイロニカ8」を300 gセットしました。今回使用した「アイロニカ8」という実験試料は,杉の材木を30 mm×50 mm×厚み15 mmほどに切り出した角材に,鉄イオンをしみ込ませたブロック状のもので,共同研究しているDASTec社より提供されたものを使用しました。

生物にとって必須の微量元素である鉄イオンは,水に溶けにくい性質を持っています。例えば塩化鉄など水溶性の鉄化合物を用いても,時間の経過とともに沈殿し,一度沈殿し結晶化してしまうと再び溶け出すことが難しい物質でもあります。また沈殿のスピードは水温が高いほど速く進行するため,温暖化によって海水温が上昇した水域では鉄イオンが極端に少なくなっていると考えられています。

サンゴは必要な鉄イオンを取り込む場合,キレート剤と呼ばれる有機物を放出し,溶けている状態の鉄イオンと結合することによって吸収しています。これは例え必要な物質であったとしても,選ばれた物質(セキュリティーチェックされた物質)でなければ,体内に取り込むことができない仕組みになっています。しかし多くの鉄イオンの沈殿物では,キレート剤で溶けないためサンゴにとって利用できない鉄イオンということになります。
そのため,必要量を吸収できずにサンゴが白化(死滅)に至ると考えています。

実験に使用した「アイロニカ8」は,角材にしみ込ませた鉄イオンに秘密があります。この鉄イオンには特殊な化合物(リグニン誘導体)が結合しており,水に容易に溶け出さない構造になっています。しかしキレート剤に対しては化学反応して,鉄イオンが解け出る仕組みになっています。サンゴは鉄イオンが足りなくなるとキレート剤と呼ばれる鉄イオンをキャッチする物質を放出します。キレート剤にキャッチされ溶け出した鉄イオンは,サンゴの細胞の表面に接触すると細胞膜が変化し,細胞内に取り込まれます。特に高温ストレスを軽減するために,葉緑体を増やすと予想されることから,通常よりも多くの鉄イオンがサンゴに必要となると考えられます。(葉緑体に含まれるクロロフィルという化合物を合成する過程で鉄イオンが必要)

その点,「アイロニカ8」はサンゴがキレート剤を放出した時にだけ海水中に溶けるため,需要と供給のバランスを調整できることから,オンデマンド型鉄剤と呼び,海洋中の鉄イオン不足の解消を期待しています。しばらくは他の条件を変えずに,サンゴや貝の観察を続けていく予定です。

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自然科学部の挑戦!サンゴを白化から守る研究レポート#3

自然科学部のサンゴレポート

今回はサンゴの飼育と共に仲間に加わった『貝』をご紹介します。

サンゴの水槽に『貝』を入れることによって,貝のエサを用意したり,エサの影響によって海水が汚れてしまったりと心配されるかもしれません。しかしいろいろ調べてみると貝も種類が多く,今回仲間となった貝は,水槽内で増えてしまった海藻やコケ(モ)などを食べてくれる種類なので,水槽の環境を保ってくれる頼もしい味方です。

ヒメシャコガイ(ザルガイ科シャコガイ亜科オオシャコ属)は,琉球列島以南のサンゴ礁に生息するシャコガイの中で最も小さい種類であり,外側のヒラヒラ部分にサンゴと同様の褐虫藻が共生しているため,生活に必要な栄養素の多くを光合成で得ています。また光の強さはミドリイシに必要なレベルであるため,サンゴと似た特徴を持っているユニークな貝です。海藻類は食べないものの,海水を浄化する役割をしてくれることから飼育してみました。

ハチジョウタカラガイ(タカラガイ科ハチジョウダカラ亜科ハチジョウダカラ属)は,熱帯太平洋に生息し,サンゴの海の環境とマッチしています。手のひらサイズと少々大き目のため,水槽の下の砂に生えている海藻を食べてもらっています。

キイロダカラ(タカラガイ科コモンダカラ亜科キイロダカラ属)は,小型のタカラガイの一種で,やはり太平洋の熱帯・亜熱帯海域に生息しています。小型のため,水槽の壁に張り付きガラスについた海藻などを食べてくれます。色や形がキレイなことから,約3500年前の中国では「貝貨」(ばいか)として,通貨の役割も担っていました。なお「貨」をはじめ,賃,買,貿,貴,財,貯,販,賄など金銭や資財に関する漢字の多くに「貝」の字が入っていることも,当時の名残であるそうです。

メガイアワビ(ミミガイ科アワビ属)はアワビの中でも,やや南方系に生息しています。水深はやや深めを好むようですが,養殖も行われていて比較的飼育しやすい貝の一つです。一見すると二枚貝の一枚が無くなってしまったように思えますが,巻貝の仲間であり,よく見るとラセンを巻いているのが確認できます。アワビもタカラガイ同様に,ガラスなどに付着した海藻などを食べてくれます。ただ,アワビ(ミミガイ科)は他の貝と異なる点は,弱いながらも『ピロフォルバイドa』という毒を内蔵に持っているので注意が必要です。しかしこの毒は2月から5月の間しか作られないので,他の時期は安心して食べることもできます。

ハマグリ(マルスダレガイ科ハマグリ亜科ハマグリ属)は,北海道南部から九州にかけて,浅い砂地などの干潟から水深約10 m辺りに生息しています。海水温は22.0~34.5℃が適温範囲であるため,サンゴの適温範囲内でも飼育することができます。またハマグリは砂に潜る性質があるため,水槽に敷いた砂をかき回すことで,一部のバクテリアの増殖を防ぐことができます。さらに,シャコガイ以上の海水浄化作用があるため,高い水質を維持しなければならないサンゴにとって,大変期待できる貝の一つです。

身近な貝も飼育することによって,親近感を持ってもらうだけでなく,目的に合わせて,かつサンゴの飼育環境に合った貝を数種類飼育することによって,どの種類の貝がこの水槽に合うかも確かめたいと思っています。貝を飼育したことによって,学校だけでなく世界的に生物多様性が重要視されている中で,サンゴを飼育するために,多くの生き物が支えているということを実感し,生き物の大切さを再確認しました。
貝

自然科学部の挑戦!サンゴを白化から守る研究レポート#2

自然科学部のサンゴ研究について、前回はサンゴを飼育するまでのプロセスをご紹介しましたが、今回は自然科学部の新しい仲間、校内の水槽で飼育を始めた3種類のサンゴたちをご紹介します。

・まずミドリイシ(ミドリイシ科ミドリイシ属)は,皆さんが砂浜を歩いているときに小枝に似ているサンゴを発見したことはないでしょうか。一般的にイメージされるサンゴですので馴染みがあるかもしれませんね。その反面,飼育するには難易度が高いため,観察を怠らないようにしなければいけません。

・次にコエダナガレハナサンゴ(チョウジガイ科ナガレハナサンゴ属),その特徴は別名タコアシサンゴと呼ばれるように,タコ足にとても似ています。

・最後にハナサンゴ(チョウジガイ科ナガレハナサンゴ属)ですが,その特徴は水の流れに応じて触手がたなびく姿は、時の流れを優雅にしてくれます。また飼育しやすいサンゴの一つでもあります。

サンゴだけを飼育していると,いずれ水槽内部に「藻」や「コケ類」などの海藻が成長してしまい,サンゴにとって良いとされる綺麗な環境が失われてしまいます。既にガラスの表面には,小さな海藻が揺らめいています。そこで海藻を食べてくれる「貝」も,いずれ仲間にしたいと思っています。

多くの科学技術や最新システムを導入しても,たった30 cm角の小さな水槽の環境を整え,熱帯の海を再現することの難しさを痛感しました。この活動を進めることで,改めて多くの生命を育む地球の素晴らしさに感心させられました。
今回のサンゴの研究を進めるにあたり,(株)DASTecの西田雄三 研究所長(元山形大学理学部教授)の協力・支援を頂いております。今後,実験の進め方や結果を共有し,学会など対外的な発表にも積極的に参加する予定です。

サンゴ

自然科学部の挑戦!サンゴを白化から守る研究レポート#1

 私たち自然科学部では、部員たちが興味のある世の中の様々な事象に対して検証実験を行い、仮説を実証していく活動を行っています。今年から環境問題への取り組みの一環として、サンゴの白化(死滅)を防ぐ方法について、長期的に検証実験を行うことになりました。

 多種多様なサンゴ礁が生育していることで世界的にも有名な沖縄地方の海域で、近年サンゴ礁の白化現象が急速に進行しており、このことは大きな社会問題として度々ニュースでも取り上げられています。これは地球温暖化による海水温の上昇によって,サンゴと共生する褐虫藻が減少していることが主な原因と考えられています。褐虫藻は植物プランクトンの一種でサンゴが発生する二酸化炭素を吸収するなど、サンゴが生きていくのには不可欠な生物と言われていますが、海水温の上昇によって、なぜ褐虫藻が減少するのか、その原因については未だ解明されていません。そこで,藻類が増殖する条件などについてインターネットや論文を調べ,それらの情報を元に,実際のサンゴを学校内で育てていく中で検証実験を進めることになりました。

 サンゴは大変デリケートな生き物であり、一般的に普通に飼育することだけでも難しいと言われていますが、部員全員で役割を分担してきめ細かく世話をすることを条件に、サンゴ(花虫綱六放サンゴ亜綱イシサンゴ目)を購入、飼育を開始しました。検証実験のために,全く同じ仕様の飼育システムの水槽2基を用意し,普通飼育と実験飼育(条件の異なる環境)でサンゴの成長の様子を観察していきます。

 今後定期的に観察レポートをアップしていきますので、私たちの「サンゴを白化から守る」研究にご期待ください。
サンゴ実験器具

「センター試験」から「大学入学共通テスト」へ

今年もセンター試験が実施されました。本校からも大学一般入試のセンター方式を狙う生徒たちが受験をし、その結果が気になるところですが、現在のセンター試験制度は来年度が最後の年となり、2020年度(2021年度大学入学生)から新しい受験制度「大学入学共通テスト」が始まります。つまり現在の高校1年生からこの新しい大学受験制度の対象となってきます。

この「大学入学共通テスト」では大きく変わる点が二つあり、その一つは現在のマークシート方式の問題に加えて、各科目とも記述問題が出題される点です。文系の科目だけではなく、数学や理科分野の科目でも記述式問題が出されることが予定されており、注目を集めています。問いに対して計算をして、1つの正解を求める力に加えて、論理的思考力や資料の分析力などを問う問題が出題されることが予想されます。

 もう一つの変更点は英語の試験内容で、従来のセンター試験で重視されていた「読む力」「聞く力」に加えて「話す力」「書く力」、いわゆる英語4技能(読む・聞く・話す・書く)を評価する問題へと変更される点です。新しい試験制度では、英語4技能評価を行っている民間の「実用英語技能検定」「TOEIC L&R/S&W」「TOEFL iBT」「ケンブリッジ英語検定」「TEAP」などの検定試験のスコアを英語の評価として認定することが予定されています。今まで以上にこのような民間の検定試験対策が重要度を増すことになってきます。

 現在のセンター試験は1990年にスタートした制度であり、今回の大学入試改革は30年ぶりの大改革となります。大学入試問題で問われる力は、各大学が求める力、更には社会でこれから必要とされる力に通じるわけであり、AI社会の到来をはじめとして現代社会が大きな変革期であることは言うまでもありません。

 学校の定期考査や大学受験突破のためだけの暗記中心の学習から、少し視野を拡げて、本当に自分の好奇心をかき立てるような分野や課題は何なのか、探究してみたいことは何なのか、自発的に学習意欲が湧き出てくるような分野をいち早く見つけられるように、日々心掛けてもらえたらと思っています。
プロフィール

品川の流れ星

Author:品川の流れ星
私立女子高校、現役若手教員。
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